喫煙/タバコと歯周病(歯槽膿漏)
2021年06月19日
タバコは歯周病(歯槽膿漏)のリスクを高めます
タバコの煙には数千もの化学物質が含まれていて、そのうちニコチンや発癌性物質などの有害物質は200とも300とも言われています。それらが、歯肉からの出血を抑えたり、歯肉を硬くすることで歯周病の症状が気づきにくくなります。
喫煙者は、お口が臭い・ヤニがついて汚いだけではなく、歯周病にかかりやすい、ひどくなりやすい、また末梢血への影響があるので、治療をしても治りにくく、更に治療後経過も悪い傾向にあることが解っています。
つまりタバコは歯周病になりやすくするばかりでなく、気付き難くし、また治り難くする原因と言えるのです。
米国全国健康栄養調査 (1988~1994)において、
喫煙者:現在もタバコを吸っていて、生涯において100本以上のタバコを吸ったことがある人
元喫煙者:生涯において100本以上のタバコを吸ったことがあるが今現在は吸っていない人
非喫煙者:生涯において100本以上、タバコを吸ったことがない人
という3つのグループに分け、12329人を歯周病にかかっているか調べました。
この調査からわかったことは、年齢、性別、人種などを考慮してもなお、
元喫煙者は、非喫煙者と比べおよそ4倍、歯周病にかかる可能性が高いこと。
元喫煙者も非喫煙者に比べると歯周病にかかる可能性は高いが、今も吸っている人ほどではないこと。
喫煙と歯周病は量依存性の関係があり、喫煙した量が多ければ多いほど歯周病にかかる可能性も高いこと。(例えば、1日に吸う本数が9本以下の人は、非喫煙者に比べて歯周病のかかりやすさは2.79倍、1日31本以上吸う人では、歯周病のかかりやすさが5.88倍であった。)
元喫煙者の中でも、卒煙期間 0~2年の人の歯周病のかかりやすさは、非喫煙者に比べて3.22倍、卒煙期間 3~5年で2.27倍、卒煙期間 6~10年で1.99倍、卒煙期間 11年以上で1.15倍と、卒煙しておよそ11年経って初めて歯周病のかかりやすさが非喫煙者と同等になると言う結果が出ました。
また、別の研究では、
ヘビースモーカー:1日10本以上のタバコを吸う
ライトスモーカー:1日9本以下のタバコを吸う
元喫煙者:以前タバコを吸ったが今現在は吸っていない
非喫煙者:生涯においてタバコを吸ったことがない
というグループに分けて、初診時とメインテナンス時を比べ、歯周病が原因で失った歯の数を調べました。
また禁煙をした人については、禁煙年数も調べました。
結果は、喫煙の量に比例して、歯を失いやすくなるという関係が見られ、元喫煙者は非喫煙者に比べて2.59倍、ヘビースモーカーは非喫煙者に比べて18.9倍、歯周病で歯を2本以上失うリスクが確認されました。
また、禁煙期間が1年伸びるごとに歯を失うリスクが6%ずつ軽減されるという結果がわかりました。
喫煙していた影響をなくす禁煙期間を、元喫煙者の歯を失うリスクが、非喫煙者と大体同じレベルまでに戻る期間、とした場合、その期間はヘビースモーカー、ライトスモーカーともに15年でした。
このように喫煙は、歯周病の進行を早め、悪化させるリスクファクターであることは、多くの研究が証明をしていて疑いのないところです。
そのため、2018年に発表されたアメリカ歯周病学会とヨーロッパ歯周病連盟の新しい歯周病の分類では、喫煙習慣のある患者さんは、より悪いカテゴリーの診断がされます。
新しい歯周病の分類では、癌と同じようにステージ とグレードを使用して診断いたします。
ステージ:喪失したアタッチメントの量や治療の難しさによってⅠ~Ⅳまでの分類
グレード:歯周病の進行速度をA~Cまでで分類
グレードでは、歯周病の進行速度を予測するために、過去のレントゲンがあれば現在のレントゲンと比べて、歯を支えている骨がどのくらい減ったのかを計算したり、過去のレントゲンがない場合は、歯を支えている骨が一番溶けている歯の状態と年齢から、進行速度を測ります。また糖尿病や喫煙量の度合いによってもグレードは左右されます。
上の表のように、非喫煙者であれば最も遅いA, 1日10本未満の喫煙者であれば中程度のB、1日10本以上の喫煙者であれば、歯周病の進行が最も早いと予想されるCに分類されます。
前述したように、喫煙と歯周病は量依存性の関係があります。
禁煙は難しいと思われている方、減煙でも歯周病には効果があります。
まずは1日10本未満を目安に減煙に挑戦してみてはいかがでしょうか?
日本歯周病学会 認定医
日本歯内療法学会 専門医
日本歯科保存学会 認定医
アメリカインプラント学会 認定医
ジャパンオーラルヘルス学会 予防歯科認定医
米国ロマリンダ大学インプラント科 卒業
北海道医療大学 歯学部 歯周歯内治療学分野 非常勤講師
歯学博士
札幌歯科 院長 坂本 渉